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予期せぬ所に・・・ [読書]

美酒と.jpg 「美酒と黄昏」、小玉 武、幻戯書房、2017
 ISBN-13: 978-4864881173

 漱石・太宰から寺山・春樹まで― 作家・文人たちの酒と酒場の歳時記。グラスの中に「居場所」を求めて、夕暮れ、人はストゥールに座る……

 背表紙のタイトルを見て、テレビのチャンネルを廻しているときたまたま地方の赤ちょうちんの下がった飲み屋を紹介する番組に出会う愛飲家の本かなと思った。

 手にとって見ると表紙には柳原良平氏の描く『アンクル・トリス叔父さん?』が。ページを繰って序を読むと、著者はサントリー(当時は壽屋)の宣伝部と広報部で長く仕事をされた方だと。

 壽屋の宣伝部と言えば、私にとっては作家の開高 健、表紙絵の柳原良平、作家の山口 瞳の各氏しか知らなかった。これら諸氏はたびたび各種メディアに取り上げられて、有名な方々だが、本書の著者は同社の広報誌『洋酒天国』(これも有名の)やその他の広報誌の編集長を歴任された方だと。知る人にとっては著名な方なのだろうが。さらには俳人でエッセイストで教育の場にも立たれたことがあるとか。

 序のタイトル夕暮れ、そして「わが酒場の歳時記」とあるように、広報誌に原稿を依頼あるいは、その他様々の機会に関わった諸氏の俳句を歳時記として春夏秋冬新年に振り分け様々な逸話と共に紹介している。

 各章題には一人の人物が揚げられているが、関連したその他の俳人や俳句、そして章題の人物がその章に限らずあちこちに現れる、誠に多彩な内容で、興味深い。また、俳句の世界も垣間見ることが出来る。勿論俳界に限らず、同社の広報部の様子や酒場、あるいは酒類についての各人の拘りの紹介なども。

 その中、冬の部の 「肘寒し-井上木它(もくだ)と角瓶」の章では『しぐるるやもの書く机肘寒し』 月斗 が掲げられている。このように本題の俳人ではなく、別の俳人の句から始まることも多い。木下木它は広報部で描画、デザインなどに関わっている。サントリーウィスキー「白札」のラベルを制作したとある。また「角瓶」のデザインも。月斗(青木)は高浜虚子と並んで子規門下生の両雄のひとりとある。

 思わず「月斗先生」に惹かれたのは私事ながら、亡き義父が月斗先生の門下生であったこと、非常に尊敬していたことを幾度となく聞かされた。勿論酒好きであった。「君は俳句のことは分からんだろう」、「君は酒飲みではないなぁ、一緒に飲むのを楽しみにしていたんだが。と言われたことだ。

 本書で期せずして「青木月斗」宗匠について知ることが出来、幾ばくかの感慨にふけったところだ。近年俳句に興味を持ち始めたが、読むばかりで、作句にまではとうてい至らない。義父は晩年まで同人誌に投句し、巻頭に掲載されたときは嬉しそうに見せてくれたが、当時は自分の仕事が精いっぱいで、応えることが出来なかったのが悔やまれる。

 
 閑話休題。当項以外にも全てに多くの人物が登場し、逸話・ちょっとした暴露・蘊蓄など一気に読ませる。

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