SSブログ

十七文字の深い感銘 [読書]

小林一茶.jpg 「小林一茶 ― 句による評伝」、金子 兜太 、岩波現代文庫 文芸236、2014
 ISBN:978-4-00-602236-5

 一茶は芭蕉、蕪村と並んで江戸時代の俳人として何となく知っていた。後二者が旅をして句会を開いたり指導していたということは特に授業を受けたわけではないか本や新聞、テレビなどから知ったような気がしていた。

 一方一茶については信濃に住み農業を生業とする一介の俳人との認識であった。ところが、他の二者と変わらない活動をしたことを本書で初めて知った。宗匠として全国を旅し句会を開いたり、添削したり。しかも彼らより遙かに多くの句を詠んでいることも。

 本書は副題にあるように、数ある句集から『一茶が詠みあげた2万句から,年次順に約90句を精選して,自由な口語訳と的確,精細な評釈を付す.僅か90句の1句1句の中に,あまりに人間的だった俳人一茶の生涯を点描して浮かび上がらせる.一茶を早くから深く味読してきた現代俳句の実作,俳句評論の第一人ならではの一茶の「句による評伝」の試みである.』(本書出版社サイトより。目次も含め)。https://www.iwanami.co.jp/book/b256209.html

目次
 はじめに
 寛政三年紀行――二十九歳(寛政3年) 「蓮の花虱を捨るばかり也」…3句評釈
 寛政句帖――三十~三十二歳(寛政4-6年) 「みやこ哉東西南北辻が花」…2句〃
 西国紀行――三十三歳(寛政7年) 「朧おぼろふめば水也まよひ道」…5句〃
 挽歌――三十七歳(寛政11年) 「炉のはたやよべの笑がいとまごひ」…1句〃
 父の終焉日記――三十九歳(享和元年) 「足元へいつ来りしよ蝸牛」…4句〃
 暦裏句稿――四十歳(享和2年) 「ひとりなは我星ならん天川」…1句〃
 享和句帖――四十一歳(享和3年) 「日の暮の背中淋しき紅葉哉」…5句〃
 文化句帖――四十二~四十七歳(文化元―6年) 「初蝶のいきほひ猛に見ゆる哉」…15句〃
 七番日記――四十八~五十六歳(文化7-文政元年) 「斯う居るも皆がい骨ぞ夕涼」…28句〃
 八番日記――五十七~五十九歳(文政2-4年) 「雀の子そこのけそこのけ御馬が通る」…11句〃
 文政句帖――六十~六十三歳(文政5-8年) 「旅人や野にさして行流れ苗」…12句〃
 文政句帖以後――六十四~六十五歳(文政9-10年) 「やけ土のほかりほかりや蚤さはぐ」…2句〃
 あとがき
 岩波現代文庫版あとがき

  著者は一茶を研究し、数々の著書がある。本書に付された評釈はそのような業績をもってはじめてなしえた深い内容であることに敬服した。門外漢の小生が受ける句からの印象を遙かに凌駕している。

nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

意外に難しいことが楽しい絵本 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。