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思いもかけず [読書]

応援団.jpg 「僕らの仕事は応援団。」、我武者羅應援團、大和書房、2012
 ISBN:978-4-479-39230-9

 「応援団」と聞いてどのような事を思い浮かべますか。
 ・スポーツ、とりわけ野球の試合において、選手の力が発揮できるよう鼓舞する集団。・そのため組織だって常日頃鍛錬している。・上下関係がきつそう。チームと同じ組織で、手弁当で活動している・・・
 このような状況は多くは高校野球や大学野球、そして社会人都市対抗野球などでテレビ放送や新聞などを通じて目にする機会がことから思い浮かぶのでは無いでしょうか。勿論その他のスポーツや文化活動でも「応援団」が活躍していることもあるとは思いますが。

 本書を手にするまでは「応援」を職業としている団体があるとは思いもよらなかった。彼らはその目的のため、日頃鍛錬しているという。

 その活動の分野は広く、スポーツ大会はもとより、結婚式、卒業式、会社の特別な日などで応援したり、「本気で生きる大人を見せたい」、「お礼がしたい」などなど多様な内容である。

 これまでテレビ、ラジオ、CM、映画、新聞、雑誌など様々なメディアに出演したり、取り上げられたりしているそうだが、寡聞にして一度も目にする機会が無かった。 http://www.gamushara-oendan.net/media

 「我武者羅應援團」を結成する経緯、活動を通じて成長していった経緯などのいくつかが本書で紹介されている。

 以下の目次から
  はじめに 「生き方」を選んだら、応援団が仕事になった
  1つめのエール ずっと、息子のことが心配だった―お父さん涙の結婚式
  2つめのエール 素晴らしきバカとの出会い―過酷すぎる24時間マラソン
  3つめのエール 言葉ならない思い―母の日の小さな応援団
  4つめのエール あなたが日本を支えている―誇り高き、サラリーマン
  5つめのエール 「押忍!」「ホス!」―心が折れそうになったinフランス
  6つめのエール 未来のナイチンゲールへ―涙の応援授業
  7つめのエール 応援から消えた「がんばれ」―3.11 応援が怖くなった日
  8つめのエール もう、自分から逃げたくない―17年前のリベンジ
  終わりに― 「WE ARE BEAUTIFUL」

  団のホームページは:http://www.gamushara-oendan.net/

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予期せぬ所に・・・ [読書]

美酒と.jpg 「美酒と黄昏」、小玉 武、幻戯書房、2017
 ISBN-13: 978-4864881173

 漱石・太宰から寺山・春樹まで― 作家・文人たちの酒と酒場の歳時記。グラスの中に「居場所」を求めて、夕暮れ、人はストゥールに座る……

 背表紙のタイトルを見て、テレビのチャンネルを廻しているときたまたま地方の赤ちょうちんの下がった飲み屋を紹介する番組に出会う愛飲家の本かなと思った。

 手にとって見ると表紙には柳原良平氏の描く『アンクル・トリス叔父さん?』が。ページを繰って序を読むと、著者はサントリー(当時は壽屋)の宣伝部と広報部で長く仕事をされた方だと。

 壽屋の宣伝部と言えば、私にとっては作家の開高 健、表紙絵の柳原良平、作家の山口 瞳の各氏しか知らなかった。これら諸氏はたびたび各種メディアに取り上げられて、有名な方々だが、本書の著者は同社の広報誌『洋酒天国』(これも有名の)やその他の広報誌の編集長を歴任された方だと。知る人にとっては著名な方なのだろうが。さらには俳人でエッセイストで教育の場にも立たれたことがあるとか。

 序のタイトル夕暮れ、そして「わが酒場の歳時記」とあるように、広報誌に原稿を依頼あるいは、その他様々の機会に関わった諸氏の俳句を歳時記として春夏秋冬新年に振り分け様々な逸話と共に紹介している。

 各章題には一人の人物が揚げられているが、関連したその他の俳人や俳句、そして章題の人物がその章に限らずあちこちに現れる、誠に多彩な内容で、興味深い。また、俳句の世界も垣間見ることが出来る。勿論俳界に限らず、同社の広報部の様子や酒場、あるいは酒類についての各人の拘りの紹介なども。

 その中、冬の部の 「肘寒し-井上木它(もくだ)と角瓶」の章では『しぐるるやもの書く机肘寒し』 月斗 が掲げられている。このように本題の俳人ではなく、別の俳人の句から始まることも多い。木下木它は広報部で描画、デザインなどに関わっている。サントリーウィスキー「白札」のラベルを制作したとある。また「角瓶」のデザインも。月斗(青木)は高浜虚子と並んで子規門下生の両雄のひとりとある。

 思わず「月斗先生」に惹かれたのは私事ながら、亡き義父が月斗先生の門下生であったこと、非常に尊敬していたことを幾度となく聞かされた。勿論酒好きであった。「君は俳句のことは分からんだろう」、「君は酒飲みではないなぁ、一緒に飲むのを楽しみにしていたんだが。と言われたことだ。

 本書で期せずして「青木月斗」宗匠について知ることが出来、幾ばくかの感慨にふけったところだ。近年俳句に興味を持ち始めたが、読むばかりで、作句にまではとうてい至らない。義父は晩年まで同人誌に投句し、巻頭に掲載されたときは嬉しそうに見せてくれたが、当時は自分の仕事が精いっぱいで、応えることが出来なかったのが悔やまれる。

 
 閑話休題。当項以外にも全てに多くの人物が登場し、逸話・ちょっとした暴露・蘊蓄など一気に読ませる。

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スリリングで興味深い業績がわかり易く [読書]

時を刻む.gif 「時を刻む湖― 7万枚の地層に挑んだ科学者たち ―」、中川 毅、岩波書店、2015年
 ISBN978-4-00-029642-7
 
 湖とは若狭三方五湖の一つ、水月湖には75mに上る堆積物がある。ボーリングすると縞模様が明瞭に有り、スライスして顕微鏡で観察、測定する。各層は厚さ0.6~1.2mmでこれを観察するのは至難の業と思われる。

 縞模様は1年に1層づつ規則正しく堆積したもので、「年縞(ねんこう)」と呼ばれる。7万年分が堆積。これほどの年縞が確認できる場所は世界的にもほとんど例がないとのこと。

 水月湖はこの年縞ができる特異な環境である。その背景は、そして形成されるメカニズムは・・・

 年縞堆積物は通常、過去の環境変遷を詳細に復元する目的で使われるのだそうだが、日本では本研究先駆者の北川浩之研究員は地質学的な「ものさし」を作ることを決断したと言う。

 年代の推定には現在では標本に含まれる炭素の放射性同位体14(C14)を測定する。その技術は1940年代後半から50年初頭にかけて確立されたと。同位体の定量には生物残渣を対象にするのだが、年代を確定するためのものさしが必要であり、本書にはわかり易く説かれている。

 ちなみに、樹木の年輪では現在最長12,550年前まで、C14半減期の測定限界は5万年前までだそうだ。それ以上のものさしが必要になれば新たな手法が開拓されなければならないのか?

  このような仕事はとても一人で出来るものでは無く、著者は世界中の研究者の参加を募り、研究資金の助成を受けるなど素晴らしい働きと感激する。海外では研究助成システムが有るのが羨ましくもある。

 ノーベル賞の理系分野に数学・地学が無いのは、業績が産業界への寄与が期待できないとでもいった背景があるのだろうか。地学・歴史学の分野で貢献した業績を顕彰する世界的なシステムが有るなら、著者達は値すると思う。既に顕彰されているのかどうか寡聞にして知らない。

 各分野でこのような研究業績がわかり易く説かれ、「理科離れ」の傾向が緩和されることを望みたい。

児童書が熱い [読書]

はじめての3.jpg 「いろんな浮世絵を楽しもう!」、深光富士男、河出書房新社、2017
 ISBN:978-4-309-62123-4

 これまでに「きみの体の中」、「MAPS」などの翻訳された本を紹介してきたが、本書も楽しんだ。

 「世界にほこる日本の伝統文化 はじめての浮世絵」シリーズ、「浮世絵って何? どうやってつくるの?」、「人気絵師の名作を見よう! 知ろう!」に続く3巻目である。

 取り上げられている絵はよく知られている美人画・役者絵・風景画・花鳥画などの他、災害に対するなまず絵・麻疹絵・疱瘡絵、明治以降の開花絵・新聞錦絵などなど25種と多岐にわたる。

 浮世絵はそれまでにあった読み本の挿絵画とは異なり、1枚の多色刷り絵で人々が広く買い求められたとされている。

 本書で初めて知ったことに、切り抜いて組み立てる「立版古」や、「両面絵」・「はめかえ絵」などもあったとのこと。はめかえ絵は子供時代女の子が紙で出来た「着せ替え人形」の原型だったのだと感心。

 立版古は切り取って組み立てられるため、現存するもが少ないとのこと。著者は3種確認していると紹介している。 そのうちの川中島合戦立体図を下に。

立版古川中島合戦.GIF



 

国語の副読本に [読書]

夜を.jpg 「夜を乗り越える」、又吉直樹、小学館よしもと新書、2016
 ISBN: 978-4-09-823501-8

 とにかく素晴らしい。もっと早くにこのような本に出会えたらと至極残念。専門家の理屈に基づく案内ではなく、自ら経験した自然体の内容が響く。

 これが率直な感想で、もっと言葉を尽くしたいのだが、紡ぐ時間が欲しい。

 そこで、取りあえず、カバー見返しの紹介文を抜粋しておく。
 『 「負のキャラクター」を演じ続けていた少年が、文学に出会い、助けられ、 いかに様々な夜を乗り越え生きてきたかを顧みる、 著者初の新書。』

 いずれ、所感を追加したい。

少し古いが [読書]

科学は大災害を.jpg 「科学は大災害を予測できるか」、フロリン・ディアク /村井章子訳/川島博之・解説 、文藝春秋社、2010
 ISBN:978-4-16-372250-4

 書名の問いかけに対する回答は目次に簡潔に示されている。「完全な予測モデルは今のところ存在しない」。
 ただ、「すでに被害を抑えることには成功している」については、その部分もあるが、そうとも言い切れない部分もあると思う。大きな原因は人々の行動に関する予測モデルにおける因子(データ)が不十分ではないか。

 原著の発行が2009年10月であるが、それ以後で状況が進んだとも思われない。

 因みに目次は
  まえがき 数学と科学の交差ポイント
  第1章:自然災害
    ハリケーン(台風)の予測は、実物の観察からモデル方程式を利用する手法へ洗練を見せ
    た。だが、微細な初期情宇検の差異が欠格に大きく響くことが明らかになる。
  第2章:気候変動
    二酸化炭素濃度上昇が大気の温度上昇につながっていることは間違いない。しかしそれは
    どの程度なのか?将来予測モデルの示すシナリオは未だにバラバラだ。
  第3章:小惑星の衝突
    数万年単位で予測が可能な天文学だが、いつどの小惑星が地球に衝突するかを予測する
    のは、意外に難しい。まずその接近する小惑星を把握しなければならないからだ。
  第4章:金融危機
    膨らんだバブルは、いつ破裂するのか?17世紀のチューリップから現代のサブプライム・
    ショックにいたる謎の解明に、地球物理学者の風雑系のアプローチが灯を点す。
  第5章:パンデミック
    鳥インフルエンザは、いつヒトからヒトへと感染するタイプに進化するのか?シミュレーション
    によって具体的な予測をたてるべく世界中の科学者奮闘している。
  第6章:予測はどこまで可能になったのか
    完全な予測モデルは今のところ存在しない。だが将来を悲観すことはない。すでに被害を抑
    えることには成功している。なにより科学も数学も日々進歩しているのだから。
  謝辞
  主要文献
  解説 誰がカオス理論を敗れるか 川島博之


大いに気に入った [読書]

MAPS.JPG 「MAPS マップス 新・世界図絵」、アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ/作・絵 徳間書店児童書編集部/訳、徳間書店、2014
 ISBN:978-4-19-863785-9

 小学生の頃から地図を見るのが好きだった。小遣いを貯めて中学生用の地図(四国の片田舎では小さな書店でせいぜい売られていたもの)を買った記憶がある。高学年になって、学習雑誌の付録であった日本の産業地図帳(10ページ程度だったか)を複製したことも。タイム・ライフ社の地図や、以前紹介した地図等々数冊に及ぶ。

 本書は市立図書館の展示書棚にあるのを手に取り知った。大判(38cm)で、出版社は「児童書」としている。このような展示がなければその存在を知るよしもなかった。「世界じゅうで大人気の大型地図絵本」とある。

 表紙からして面白そうだ。ちらっとページを繰り、印象に違わず興味津々。借り出した。これまでとは違った地図帳である。決して世界中の国々が紹介されているわけでもない。それでも大人でも十分楽しめる本である。早速最近では徒歩で行ける唯一の書店で取り寄せた。

Maps Japan.jpg 内容については出版社のサイトを引用する。
 ポーランドで人気の絵本作家夫妻が、世界の42か国をすみからすみまで調べあげ、まる3年かけて、地図とイラストをかきました。食べ物、歴史的な建物、有名な人物、動物、植物…すべてのページに、計4000以上のイラストがぎっしり。地理、植物、動物、歴史、スポーツ、食べ物――さまざまな分野にわたり、イラストで紹介します。198か国の国旗と正式名称も掲載。

 日本はこのように:各国共見開きで表され、縮尺は一定しない。

  現役の頃は「定年後に読もう」と様々なジャンルの本を買い求め書架一杯に並んでいるが、いざ定年となり、読み始めようとするが、いかんせん文字が小さく長続きしない。

 というわけで、近年は写真やイラストの多い本を求める事が多くなった。できれば活字も大きいものを。そして絵本や絵画集が目を引く。勿論、活字ばっかりの本でも、これまで興味の無かったテーマや分野と。

 書架が満杯で収入も激減した今日、残りの人生読み切れない。蔵書は増やすまいと思いながらもついつい。図書館で知って、気に入ったものを購入している。読んでしまえば買う必要な無いだろうとは言われるが、気に入ったものは手元に置き、気分に合わせてゆっくりページをめくりたい。

 「図書館が出版を潰す」と声高に叫ぶ輩がいるが、良本であれば決してそのようなことはない。むしろ未知の本に出会え、求めるきっかけとなる。

 最近の大型化した書店はでは目移りして欲しくなる本との出会いの機会を失っている。

So-net ポイントについて最近気づいたこと [その他]

 マンスリーくじやその他ポイントサービスもチェックしているが、ポイント付与のメールで時々

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 といった、別途付与されると思われる表示とアドレスが付いていることがある。

 しかしながら、クリックしてもポイントが付与されていないような気がする。
ポイと通帳で確認しても、付与された気配はない。

 これまで毎回クリックしてきたが・・・

読み方と言うよりは人生訓の書である [読書]

非常識な読書.jpg  『人生がガラッと変わる「本の読み方」30』との副題があるが、読み方と言うよりは人生訓の書であるとの印象。

 著者は本との出会いによって素晴らしい経験をしたので、その感動を伝えたく、これはと感じた本をアドバイスする「読書のすすめ」という本屋を開いたそうだ。その趣旨を綴った内容である。

 参考までに目次は
  プロローグ
  PART1 なぜ、読書で人生がガラッと変わるのか?
  PART2 「常識」に操られると搾取された人生になる
  PART3 世の中は一握りの人間の思考で動く
  PART4 人のために本を読むと力がわく
  PART5 読書を信じる者は救われる
  PART6 「生き抜く知恵」はすべて読書が教えてくれる
  エピローグ

hint.JPG
本書171ページより

 


英国の児童書に刮目 [読書]

体の中.jpg 「きみの体の中」 きみの体はどうやって病気とたたかうのかな? R.ウォーカー/岩田健太郎訳、保育社、2016
 ISBN:978-4-586-08549-1

 本のサイズ、言葉の選択と表現などから対象とする年齢層が判りかねた。
 大型で一見小児向けの絵本のように思われるが、内容がレベルの高いものである。
 出版社のサイトに依れば「小学校高学年~大人」とある。 「病気やけがに体がどうやって戦っているかを、物語風の構成・美しい3Dカラーイラスト・詳細な解説文で紹介。体の仕組みに興味を持ったお子さんにピッタリ。」

 朝起きてから就寝までの一日の間で遭遇する症状・外傷などについて、体の内外で起きていること、それに対する防御作用、予防など16例が紹介されている。間に「コラム」として補足情報が、巻末には用語の説明と索引も付いている。

 取り上げられた対象は主として急性期の症状で、さらに病気とは言えないが予防としての生理現象である排尿・発汗・睡眠など。主となる情景が見開きに描かれ、それに対応する反応が経時的に小さい枠ながら取り上げられており、素晴らしい構成だ。

 対象を大人まで拡大するなら、糖尿病・高血圧・高脂血症・がんなどの慢性疾患や重大な亜急性疾患などが取り上げられていないことだ。とは言え、本書の内容は大人にも十分満足できるものだ。

 原書出版元のサイトでは対象は8~12歳とある。従って、日常遭遇する事例を取り上げているのだと納得する。それにしても内容が高度だなぁと感心する。

 揚げ足を取るつもりはないが、訳者のことば、では「じゃない・・・」の繁用が読みづらさを感じる。はじめに、ではきちんとした文章なのだが。
 あと、気になったのが14ページコラムで海綿骨の強度の説明で例えとして「ハチミツみたいな形は・・・」とあるが、蜂の巣(あるいはそのハニカム構造)ではないのだろうか。糸を引いたような状態を「ハチミツ」で表しているのだろうか?日本ではレンコンの方がなじみ深いように思えるが。

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