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多くの人々に読まれるべき [読書]

悪医.jpg 「悪医」、久坂部 羊、朝日新聞出版、2013年
ISBN:978-4-02-251125-6

 本書は早期胃がんに対する手術を受け、2年後に再発、肝臓に転移し、手術をした外科医によって各種の治療を受けていたが、万策尽き、それも手詰まりとなり、「治療を中止し、残りの時間を有意義に過ごしては」と告げられた52歳の独身男性患者と、「患者のために」と助言した医師を中心に展開する医療小説である。

 基本的にはがん治療と終末期医療の問題を提起している読後感であった。治療の効果より、副作用のほうが強くなる。そうなれば、治療をしない方が命が延びる。このような場面に至ると患者の思いには、
 1)それ以上の治療は中止して、体力のあるうちに好きなことをして残り時間を有意義に過ごしたい、
 2)治療がどんなに辛くとも、あらゆる方法を試して1分・1秒でも長生きしたい。
の二通りがあり、医師もどちらを薦めるかに苦慮するとはよく言われているところである。もっとも、医師と患者の間に信頼関係があれば、旨く対応ができると思うが。

 本書は日本医師会により「第3回日本医療小説大賞」に選ばれている。その紹介に「この小説は、再発したがん患者と、万策尽きた医師が繰り広げる人間ドラマを描いた感動の医療エンターテインメントです。」とある。

 しかし、それだけではないのではないか。

 効くということは必ずしも治るということではないという状況が、がんに限らずいくつかの病気に対して明らかになってきた。。

 せいぜい良くて現状維持、あるいは進行を遅らせる程度。高血圧、高脂血症、糖尿病、アルツハイマー症等々

 その「効く」というのもがんに対して高くて3割程度。それ以外の病気では...

 抗がん剤ではがんは治らないという事実を、ほとんどの医師が口にしないこと。医師が目指すのはがんの縮小や腫瘍マーカーの低下、すなわち延命効果でしかない。

 のが現実ではないか、

 そこで、、
  ・患者・健康人には、がん治療の現実を広く知って欲しい
  ・医師には、患者の苦悩を観念的でなく理解して欲しい
   ための大賞では?と想像している。

 本書中には、

 大半の患者は、抗がん剤はがんを治すための治療だと思っているだろう。
 患者は、望みがない状況になっても無理やり希望を造り出す。

 副作用より、何も治療しないでいることのほうがつらい。
 希望は、患者なりの、心の準備なのだから。

 というような医師同士の「不充足感?(適切な言葉が浮かばない)」や患者の独白がある。

 ちなみに、

「がんは治療か放置か」と題して朝日新聞7月4日のテレビ番組紹介面、「記者レビュー」コラム記事。あいにくこの番組は視聴していないので、このコラムからの引用だが、

 6月29日BSフジ「ニッポンの選択」で、2人の相反する医師の主張が激突した。
 「放置したら多くのがん患者は亡くなる」
 「手術が本当に有効かどうか省みられていない。胃がんは発見が増えても死亡者数は減っていない」

  などとあい譲らずの展開だったそうだが、平均延命期間そして生活の質にどれぐらいの差があるのか。といった議論はあったのだろうか。


 後半には(簡単ではあるが終末期医療/介護の問題も)

 最後に患者の思い三つ目が。「なるほど」とも思うが、主人公には疎遠の妹家族がいるものの、基本的には独身、遺族の経済的不安は不問という背景である。

 私には家族がいるので、経済的理由と、施療の現実から2)3)については保留。現在健康で、終末期に至っていないということもあるが。はたして...

タグ:医療小説
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